1年目はいいとしても、2年目に解約がドッと増えると、あてにしている年会費収入がなくなり打撃を受ける。
解約数の多さもカード会社を悩ます要因になりうる。
そうしたリスクを考えて、提携に消極的な構えを見せるカード会社もいくつかあった。
Sクレジットは、95年当時、私の取材に対して「Tカードとの提携で各カード会社さんは頑張っていらっしゃいますが、あそこまで拠出して大丈夫でしょうか」と心配し、提携は持ち出しが多くなるから、積極的には展開しないと宣言していた。
DCカードも提携はM系列の会社を中心に進める方針を打ち出し、闇雲な拡大戦略は取らないとしていた。
Aは社是として「ワンワールド・ワンブランド」を標梯していたために提携には一切関心を示さなかった。
「センチュリオンの板面をいじることは絶対にない」と言っていたものだ。
それに対してt JCB、UCカード、ミリオンカード、日本信販などは、メーカーやサービス業と相次いで提携を発表し、きわめて積極的な取り組みを見せていた。
ところが、96年の半ばになってから情勢が変わってきた。
何といってもTカードであった。
年間目標の100万枚を半年で達成し、「どうせ、すぐに伸びも止まるだろう」と多くの人たちが見ていたものの快進撃は止まらず、その後も、毎月4万〜5万枚は確実に増えていった。
そのために、消極的であったSクレジット、DCなども方向を転換し、企業との提携を本気で考え、FUPカードの発行を検討し始めた。
その一番の理由は、蹟挿している間に、さまざまな分野でFUPカードが増加したため、「ここでやらないと切り崩される」という危機感があったからだ。
実際、Tカードでは、JCB、UC、ミリオンの各社に、Sクレジット、DCの顧客はごっそり持っていかれた。
顧客囲い込みは何もメーカーだけではない、カード会社でもそれはいえる。
何もしないでいると、同業他社に優良顧客をすべて取られてしまうのだ。
また、Tカードの場合は、稼働率はそれほど高くはなかったが、新規率が7〜8割と高く、これまでカードを触ったこともない<買@ージンユーザー″が大量に獲得できた。
さらに、地方での獲得比率が高くこれまでクレジットカード事業は、大都市中心といわれていたが、地方でのビジネス展開の足がかりができたと評価する声が高まっていった。
こうした事情があったために、Sクレジット、DCも提携事業に積極的に乗り出すことになった。
特にSクレジットは、それ以来、積極策に転じており、ここにきてNTT、T、各航空会社とも立て続けに提携を行い、今や一番熱心な会社になっている。
また、Aも97年秋からクレディセゾンとの提携カードを発行するなど方向を転換している。
カード会社から見た提携のメリットでは、具体的にカード会社にとっては、このカードはどんなメリットがあるのか。
それをもう少し詳しく見ていくことにしよう。
カード会社がFUPカードを発行するメリットはそれがメインカード戦略の「切り札」になりうるからだ。
カード業界は、バブル期までは各社が発行枚数を競っていたものだが、今は1枚のカードの稼働率を上げることに熱心になっている。
いくらカードを発行しても(持ってもらっても)、そのカードが財布に入ったままで使われなければ何の意味もない。
加盟店でカードを利用してもらい、手数料が発生して初めてカード会社は収益をあげることができる.バブル崩壊後の景気低迷で、カードの稼働率の大切さを痛感した各社は、財布の中に残る最後のカードになろうと競っている(財布の中のカード戦争)0その戦略として、FUPカードは極めて有効なのである。
このカードはその人の噂好やライフスタイルに合わせたカードだから、広く一般に行き渡るというものではないが、入会者のモチベーションは相当に高い。
目的がしっかりしているために意識的にカードを利用する。
JCBの担当者はこう語る。
「FUPカードを出すということは、われわれにとっては大きなチャンスです。
それに年間5回しか使っていない人が10回、10回の人が20回使っていただくようになるのは比較的簡単です、お金もかからない。
効果もはっきり出ます」つまり、カード会社からすると、目的意識を持った優良顧客の囲い込みができ、しかも確実に稼働率がアップするから、このカードは財布の中の最後の1枚になりうると期待するのである。
それだけでなく、大型のFUPカードには、会員を大量に獲得できるというメリットがある。
Tカードはわずか2年間で200万人を超える会員を集めた。
これは小規模なカード会社を上回るほどの会員数といっていい。
FUPカードは稼働率が上がるために取扱高も増加傾向を示す。
Nの石油業界の大手3社と独占提携しており、その結果、96年の売上を大幅に伸ばし、97年3月期決算の取扱高でカード業界総合4位から3位に浮上した。
顧客囲い込み競争は提携先企業だけが行うのではなくカード会社間でもそれなりに職烈だ。
例えば、顧客吸引力が強いTカードには、SクレジットやDCカードのようなTカードと提携していないカードを持つ人たちも大量に流れ込んできた。
したがって、Tカードと提携しているJCB、UC、ミリオンにとっては、母体行との系列を超え、S銀行や東京M銀行の口座を持つ新しい顧客獲得のチャンスとなった。
また、カード会社自身のpRにもこの.カードは貢献している。
UCカード提携事業部のI次長は語る。
「少なくとも財布の中に入れていただくわけですから、財布の中を覗いたり、買い物をするたびにTカードが出てくれば、そのたびに自分はTの会員なのだなと思い、新しいクルマを買い換える時に有利に働くはずです。
無意識のうちにブランド訴求効果があって顧客を囲い込むツールになっています。
また、日常の買い物でも、財布を開けばTカードが見えるので、加盟店の店員もTはよく使われているといったいいイメージを抱くことになるでしょう。
カード自体が広告塔のようなものになっています。
さらに言えば、TのロゴのところにUCのマークが入っていて、UCカードの広告にもなっています」S、Nと日本信販の場合も同じだ。
「CMで提携カードがクローズアップされるたびにニコスの『C』マークが映るので大変にありがたい」3社と提携する日本信販広報部の担当者はニッコリ微笑んだ。
さらに、カード会社にとっては一度に多くの加盟店を獲得できるメリットもある。
Tカードの場合には、T車両販売店、レンタリース店374社、営業所のネットワークがあり、そのすべてが加盟店として加わったから、カード会社の加盟店数も飛躍的に増えた。
NECと手を組んだGCカードの場合も、NECの全国の販売店がそのまま加盟店化できることが大きなねらいだった。
その他のメリットとして、営業的な意味合いも大きい。
これまでのカード会員獲得は、銀行本体とカード会社の営業部隊(フランチャイズ含む)で行ってきたが、Tカードの場合には、それに加えてディーラーのセールスマンもクルマを売ると同時にカードの拡販を行っている。
彼らが全国100カ所の拠点で活動するので、全く新しい、強力な営業マンを獲得できたことになる。
カードではGCは全国のNECの販売店の店舗網と店員の力をあてにすることができる。
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